これまでの地震被害例から、以下の建物特性を考慮し、耐震診断・構造設計を行っています。
建物の重量は軽いがよい
建物を鉄板葺き等の軽い屋根にした建物は、地震被害が少ないことが知られています。
建物の作用する地震力=建物の重さ×加速度
建物を耐震的にするには、建物重量を軽くして、地震力を減らすことが有効です。
例えば、2階に重いピアノや多くの書棚をのせる(2階の床の積載荷重が大きい)と、1階にかかる地震時の水平力は大きくなり、耐震的に不利になります。
建物の平面形は単純がよい
耐震的な観点からみれば、建物の平面形は、なるべく単純で整形なものがよいです。
平面がL形U形などの建物、凸凹が多い複雑な平面形の建物は、突出している部分と本体部分の剛性が異なるため、それぞれの部分がバラバラに揺れ動いて、両者の境界部分から壊れやすくなります。
立面形も単純がよい
立面形に関しても、上階の平面が下階の平面のなるべく中央ののるなど、単純で矩形なものがよいです。
片寄って載っている建物では、その重心(建物全体の重さの中心)と剛心(耐力壁の剛性の中心)との間にズレが生じやすくなります。
このような建物が地震力を受けると、ねじれにより大きく変形し、その側から建物が壊れる恐れがあります。
屋根面・床面は大切です
建物全体が一体となって、地震力の抵抗するため、屋根面・床面などの水平構面は、十分な強度・剛性をもっていることを前提としています。
水平構面の強さが低いと、耐力壁のない部分や、少ない通りは、変形が過大になって、この部分から壊れる恐れがあります。
吹抜けを設ける場合は
吹抜けや階段室を設ける場合は、大きさを最小限にし、かつ、周辺の強さ・剛性を高めるようにします。
吹抜けが大きい場合は、平面的にブロックに分けて、ブロックごとに強度・耐力を確保し、かつ、個々のブロックとしても、全体としても、有害な変形がないようにします。
基礎は
基礎は、上部軸組に生じた力を安全に地盤に伝える役割をもっています。
従って、耐力壁下には連続する基礎を設け、十分な強度と剛性を確保する必要があります。
土台、アンカーボルトは
土台は、木造の軸組に生じる力を基礎に伝える役目をもっています。
アンカーボルトは、建物に作用する地震力によって、上部軸組が基礎からずり落ちるのを防止し、耐力壁によって生じる引抜力を基礎に伝達する役目をもっています。
安易な混構造は地震被害を受けます
・1階部分をRC造とし、その上部を木造とする
・1階を大スパンとするため、1階のフレームに鉄骨梁を利用
などの混構造は、いずれも地震被害を受けています。
混構造は、異種構造との接合部など、特殊な設計が求められます。特に、平面的な混構造は、異種構造部分の構造特性に大きな違いがあるため、高度な配慮が必要になります。
平面的な混構造は
平面的に構造が異なる場合は、原則としてエキスパンションジョイントを設け、構造種別ごとに分離して、個々に設計します。
または、一体の床により、柱・耐力壁などの耐震要素間の応力伝達を十分に確保し、偏心によるねじれ倒壊が生じないようにします。
立面的な混構造は
立面的な混構造で、下層がRC造の場合は、その剛重比が木造・S造部分に比べて十分に大きいので、木造・S造部分が地上にある場合より、大きく揺れる傾向があります。
なお、木造住宅の耐震診断は、混構造については、この立面的な混構造に限り適用範囲としています。